協議離婚
協議離婚の場合には、協議書の作成や財産の分与、とりわけ財産が不動産であれば登記手続きをし、慰謝料や養育費の決め事など手続きが多数あります。
離婚した(またはする予定)の夫婦が話しあうということは、精神的にも辛い面があるとは思いますが、大切なことなので、最後まできちんと話し合うことに努めましょう。
また、裁判所の手続きの場合には、上記の話し合いを第三者(調停委員)に間に入ってもらい紛争の解決を図ることとなり、それでも解決しないときには裁判に至ることになります
そこで当事者にとって問題となるのは、それら一つ一つの手続きを自分たちでやるのか、専門家に任せるのか、任せるとしたら誰に相談すればいいのかということではないでしょうか。
当事務所では、離婚協議書の作成、財産分与の登記手続き、調停手続き、裁判書類の作成、慰謝料や養育費の請求手続きなど、相談を含め包括的に手続きをおこなっております。
離婚の際に取り決めること
離婚の際に取り決めることはたくさんありますが、多くの場合離婚後に協議しても問題ありません。しかしながら、親権者の決定だけは離婚する際に絶対取り決めねばならない最重要事項になります。離婚届には親権者を記載する欄が設けられており,親権者を記載しなければ離婚届自体を,役所で受け付けてもらえないのです。
また、離婚協議では以下の内容の取り決めをしますが、協議内容を決めることより、協議内容をどのようにして守ってもらうかということも大事なポイントになってきます。
1.親権者
成年に達しない子どもは親の親権に服することになり,その親権は父母が共同して行使することが原則です。
ただし,父母が離婚する場合,父母が共同して親権を行使することはできませんから,父母のいずれかを親権を行使する親権者として定める必要があります。
協議、調停、裁判という離婚の形態にかかわらず必ず取り決められるものです。
父母が協議上の離婚をする場合は,その協議で親権を行使する親権者を定め、裁判上の離婚をする場合は,裁判所が父母の片方を親権者と定めることになります。
夫婦間に未成年の子どもがいる場合には、離婚に際して、夫婦の一方を親権者と定める必要があります。
通常、親権者となった者は、財産管理権と身上監護権を持つことになります。
財産管理権
(1)包括的な財産の管理権
(2)子どもの法律行為に対する同意権
身上監護権
・身分行為の代理権身分行為の代理権子どもが身分法上の行為を行うにあたっての親の同意・代理権
・居所指定権親が子どもの居所を指定する権利
・懲戒権子どもに対して親が懲戒・しつけをする権利
・職業許可権子どもが職業を営むにあたって親がその職業を許可する権利
などがあります。いずれも親の権利ではありますが,そのいっぽうで,社会的に未熟な子どもを保護して,子どもの精神的・肉体的な成長を図っていかなければならない親の義務という側面もあります。
監護権は親権の一部ですから,原則として親権者がこれを行使します。親権者と監護権者は一致したほうが,子どもの福祉にとって都合がいいと考えられているからです。
しかし、場合によっては親権のうち,身上監護権のみを親権者でない親に与えることがあります。つまり財産を管理する親と、子どもの近くに居て子どもの世話や教育をする親を分けることがあるということです。
たとえば,
・親権者は父親だが,父親は日頃残業ばかりで帰宅が遅くなり子どもの世話や教育がまったくできない。
・妻側に浪費壁があり財産の管理については父親が適任であるが,子どもが幼いので母親を身の回りの世話をさせた方が子育て環境としては都合がいい
といったような事情がある場合には,例外的に父親が親権者,母親が監護権者(逆の場合もあります)と定めることができます
。
ただし、監護権者には親権がないので、法律行為等をするときには親権者の同意が必要になってきます。
2.養育費
養育費とは子どもを育てるのに必要な費用のことです。
一般的にいえば、未成熟子が自立するまでに必要な費用
たとえば、
・衣食住に必要な経費
・教育費
・医療費
・最小限度の文化費
・娯楽費
・交通費等
などを指します
協議、調停、裁判という離婚の形態にかかわらず必ず取り決められるものです。また、離婚後でも養育費の分担について話し合うことができます。
ⅰ.子どもと生活しない側が養育費を支払う?
養育費は、親子の身分関係から発生するものですから、どちらに親権があるかは無関係で、父母の資力に応じて分担することになっております。たとえば、親権が父親で母親に資力がない場合の養育費の取り決めは「養育費は父親のみが負担する」という取り決めも可能です。
子どもを扶養することは親子関係に基づく親の義務であり、離婚後子どもと一緒に生活しないことになった側にも扶養義務があります。したがって、子どもと一緒に生活しない親も養育費を支払うことになるのです。
協議で決める場合
・現在子どもを育てるのにかかっている費用
・今後成長に伴ってかかるだろう費用
・お互いの保有資産
・お互いの今後の収入
・お互いの経済状態
などをよく検討して決めます。
養育費は分割払いとされることが多いので、そのような場合には支払の期間と支払金額、支払方法について具体的に決めておく必要があります。
調停や裁判で決める場合
・協議できないときには、家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てます。
・調停で合意できず不成立となった場合には、家庭裁判所が必ず審判してくれます。
ⅱ.養育費はいくらもらえるか
子どもの養育義務は、親と同程度の生活を子どもに保証する「生活保持義務」であり、親はその資力に応じて未成熟の子どもを養育する義務を負います。
養育費の額は、これを支出する親の収入を基準にして定められますが、同居する親の生活水準とも関連しますから、一方の収入や生活レベルだけでは判断できません。母親に経済力がなければ父親が全額を負担することになります。
双方の資産、収入、職業、社会的地位などを考慮しながら、子ども1人の場合月2~5万円、子ども2人の場合月4~6万円で決められる例が多いようです。
養育費の額は、裁判所で採用されている算定基準がいくつかありますがいずれも決定的なものではありません。父親または母親の資力によって決められているのが現状です。
ⅲ.養育費はいつまでもらえるか
養育費の支払いは、一般的には子どもが社会人として自立するまでとされています。これは成人になったときを意味するものではなく、高校卒業まで、18歳になるまで、成年に達するまで、大学を卒業するまでなどさまざまです。一般的には、親の資力や学歴といった家庭環境によって判断されています。
ⅳ.支払いは一括払いか月払いか
相手のギャンブルや浪費壁が離婚の原因になっているようなケースでは、額が低くても一括で受け取るほうがよい場合もあります。いろんな状況を勘案し、慎重に判断しましょう。
ⅴ.養育費の支払い方法
一般的には、親権者の口座か子ども名義の口座に振り込む方法をとります。
ⅵ.過去の養育費は支払ってもらえるか
夫婦が別居している場合に、夫婦の一方が支払った養育費は離婚までは婚姻費用にふくまれますので、離婚するときには財産分与に過去の婚姻費用の清算という要素も含まれることになります。また、養育費の請求には、時効はありませんので何年経とうが請求ができることになります。
ⅶ.養育費の変更はできるのか
養育事情に変化があれば養育費の免除ないしその減額、増額を求めることができ、その変更を家庭裁判所に求めることができます。
協議で決めることができない場合には、家庭裁判所に養育費増額請求の調停、養育費減額請求の調停を申し立てます。
養育費の増額で考慮される事情
・入学、進学に伴う費用の増加
・病気や怪我による治療費
・受け取る側の病気や怪我
・受け取る側の転職や失業による収入の低下
・物価水準の大幅な上昇
養育費の減額で考慮される事情
・支払う側の病気
・支払う側の転職、失業による収入の低下
・受け取る側の収入増
子どもが再婚相手と養子縁組をした場合
元の妻が再婚し、再婚相手が子供と養子縁組をするような場合には、再婚相手にも子どもの生活費を負担する法的な義務が生じますので養育費の減額が認められる場合があります。
養育費に税金はかかるか
養育費として取得したお金には、通常認められる範囲に限って非課税とされています。
養育費の支払いが滞った場合
離婚協議は夫婦間で話し合いがまとまれば成立しますから、必ずしもその内容を文書化する必要はありません。
しかしながら、離婚協議で決定したことを相手方が守ってくれる保証がないこともおわかりでしょう。慰謝料や養育費の支払を離婚協議書で定めても、最初の数年は守ってくれますが、次第に遅れたり、滞ったりするというケースは残念ながら多く見られます。
そのような状況になったときに、協議書を作成していないと相手方に支払わせることは難しくなります。 また協議書を作成していたとしても、それが私署証書(当事者同士で作成した書面)の場合、給与や銀行預金を差し押さえたくても、裁判所に支払うよう訴訟を提起し、勝訴判決をもらわなければなりません。当然に時間と訴訟費用(30万円~)、過度のストレスがかかることになります。
このような場合に備えて、離婚協議書は公正証書にしておくことをお勧めしております。、公正証書に『強制執行認諾条項』をつけることで、勝訴判決をもらったのと同じ効果があります。つまり、支払いが滞った場合には即座に相手方の財産を差し押さえることができるのです。
3.面接交渉の方法
面接交渉権とは、監護権を持たない親が子供と会う権利のことを言います。法律上の規定する条文はありませんが、親として当然の権利として裁判上でも認められています。
しかし、子どもの福祉に悪影響がある場合(暴力を振るったり、子どもが出入りできないような場所に連れて行ったり、現在の交際相手に会わせるなど)には面接交渉権を拒否したり、制限することはできます。
面接交渉権を認める場合の決め事
以下のような事柄を事前に決めておとよいでしょう。
・月に何回会えるのか
・何時間会えるのか
・どこで会うのか
・日時は誰が決めるのか
・電話やメールのやりとりを認めるのか
・誕生日などにプレゼントができるのか
・学校行事へ参加できるのか
・子供の受け渡しの方法
・連絡手段はなにを使うのか
4.財産分与
財産分与とは、結婚生活の中で夫婦が協力して築き上げてきた財産を清算し、夫婦それぞれの個人財産に分けることを言います。
財産分与の対象となるものは、貯金などの現金だけではなく、株券などの有価証券、家具・家電、厚生年金や共済年金、退職金なども対象となっています。
また、夫名義で購入した不動産も財産分与の対象となり、妻側にも分与の権利があります。
逆に対象とならないものとしては、結婚前に個人で貯めた預金株券、自分の親から相続した財産など、夫婦生活で得たものでないとされる財産は分与の対象外となります。
離婚当時に存在を知らなかった財産も 離婚してから2年以内であれば分与請求することができますので、早い段階で相談していただくことをお勧めいたします。
以下、特に複雑な財産分与のご説明をいたします。
ⅰ.住宅ローンが残っている不動産の財産分与
住宅ローンが残っている不動産の分与の場合は簡単に名義を変えるわけにはいきません。
なぜならば、名義変更をする前に銀行の承諾を得る必要があるからです。
たとえば、3,000万円の不動産を購入した場合、夫が2,000万円、妻が1,000万円負担したとします。この場合に夫のみ借入れで、妻は現金で支払ったというような事情がある場合で、妻の名義を夫に移すのであれば、問題なく銀行も承諾すると思います。但し、妻がローンの連帯保証をしている場合は承諾をもらえない可能性があります。
上記の例で、夫の名義を妻に移すというような場合は、最低でも妻がローンを引き受けなければ銀行の承諾を受けるのは難しいでしょう。但し、この場合でも、夫が相当な資産を持っている場合は認められる可能性はあります。
つまり、当事者の資産背景に問題がなければローンが残っている不動産でも相手方に移すことができることになります。
では、銀行が承諾しない場合はどうするかというと、離婚後も名義を変えずにそのまま住み続けるか、売却して現金を分与するかのどちらかになることが多いように思います。
絶対にしてはいけないことは、銀行に無断で所有名義を移すことです。もし銀行に発覚したら最悪の場合、ローン契約は解除となり、残額を一括で支払うよう請求されることがあります。ご注意ください。
ⅱ.ローンが残っている車両の財産分与
ローンが残っていなければ名義を変更するだけです。
ローンが残っていれば、その名義は「所有権留保」といって通常ローン会社になっていますので、夫婦の合意だけでは分与できません。
このような場合は、使用者の変更という手続が必要になります。
ⅲ.退職金の財産分与
退職金は,給与の後払い的な性質があると考えられていますので、退職金も給与と同様に財産分与の対象となるのです。
しかし,退職金が実際に支払われるのは退職のときであり,場合によっては支払がなされないこともありますそのため,退職金を受け取るのは何年も先であるというときにまで、一律に退職金を財産分与の対象としてしまうのは問題があります。
退職金を財産分与の対象とするためには,退職金の支給が確実であるという前提が必要になりますし、確実だとしても、その全額が対象になるわけではなく,婚姻期間に応じた部分のみが対象となります。
ⅳ.年金分割制による財産分与
年金分割制度は,離婚後に片方配偶者の年金保険料の納付実績の一部を分割し,それをもう片方の配偶者が受け取れるという制度です。
この制度は「厚生年金保険および共済年金の部分」に限り,「婚姻期間中の保険料納付実績」を分割する制度です。国民の基礎年金である「国民年金」に相当する部分や,「厚生年金基金・国民年金基金」等に相当する部分は分割の対象にはなりませんし,婚姻前の期間の分は反映されません。さらに,将来受け取る予定の年金金額の2分の1をもらえる制度ではなく,保険料の納付実績の分割を受けるという制度です。
また、年金受給を受ける本人が保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合計期間が25年以上にない場合には,年金受給資格が発生しませんので、せっかく年金分割をしても年金が受け取れないことになります。
5.慰謝料
慰謝料とは、離婚原因を作った有責配偶者が、それにより精神的に苦痛を被った他方の配偶者に対して支払うものです。相手方に不貞があった場合は、慰謝料を請求することが出来ることになります。
離婚の際の慰謝料については,大きく次の2つに分類されます。
(1)浮気や暴力など離婚に至った原因行為から生じる精神的な苦痛に対するもの
(2)離婚をすることそれ自体(=配偶者の地位を失うこと)から生ずる精神的苦痛に対するもの
一方配偶者の(不貞行為)が原因で離婚に至るような場合には,浮気相手(不貞相手)に対して慰謝料を請求ができることになります。
離婚をお考えの方が専門家を選ぶ際のポイントとして「離婚に関する手続きを最初から最後までサポートできるかどうか」ということが挙げられます。
たとえば、離婚について夫婦間が同意していない場合に行う調停や裁判などの訴訟は、弁護士のみが執り行うことが出来ます。
しかし、夫婦間で離婚について合意している場合には、協議書の作成から不動産の財産分与の登記までを含め司法書士が手続きの処理をすることが出来ます。
また、専門家を選ぶ際のもう一つのポイントは、専門家に支払う手続き費用ではないでしょうか。一般的に弁護士に支払う費用は高額になる傾向にあります。もちろん、訴訟にまで発展してしまうような場合や、代理人同士で協議をするには弁護士に依頼しなければなりませんが、協議が整っている場合や、ご自分で交渉や裁判(訴訟書類はこちらで作成します)をするような場合にまで弁護士に依頼する必要はありませんよね。結果が同じであれば、費用対効果で選んでもみてもいいのではないでしょうか。