法定後見の利用
遠方で一人暮らしをしている母が認知症になったようです。私たち兄弟の誰かが付き添って日常生活の支援ができればいいのでしょうが、それも難しい状況です。判断能力が不十分な高齢者を狙う悪質な詐欺グループがいることはニュースでも頻繁に報道されいますので、十分ご承知おきのことと思います。では、一度ターゲットになってしてしまうと、本人の情報が悪質業者の名簿に記載され、世の中に出回ることとなることはご存じですか。詐欺グループらは、本人の財産がなくなるまで徹底して、それこそ根こそぎ詐取することを企んでいます。巧みなセールストークを武器に入れ替わり立ち代わり、あるときは販売業者に、またある時は役所の職員、銀行員を装ってやってくるのです。判断の能力が減退している高齢者が太刀打ちできるわけがありません。
また、独居の場合は病気になっても診療にすら行けないので、病気が悪化したり、最悪のケースを迎えることも少なくありません。
こんなとき、その人のために、契約を取消したり(同意権・取消権)、その人に代わって入院契約(代理権)をしたりする人が必要になります。
それが法定後見制度です。
法定後見の種類は①成年後見②補佐③補助の3種類があります。
類型の違いは、本人の精神状況の程度によって家庭裁判所の審判にて決定されます。
審判により選任された人は、一定の権限が認められており、介護契約などの身上監護と、銀行の預金契約などの財産の管理を目的として、本人の身体的、精神的状況および生活状況に最大限の配慮をしながら職務を遂行していくことになります。
補助 | 保佐 | 後見 | |
判断能力 | 不十分 ※注1 | 著しく不十分 ※注2 | 常時なし ※注3 |
支援者 | 補助人 | 保佐人 | 成年後見人 |
支援内容 | 申立時に本人が選択した特定の法律行為の代理権や同意権・取消権によって支援します | 申立時に本人が選択した特定の法律行為の代理権や同意権・取消権によって支援します。 | 日常生活に関する行為を除くすべての法律行為を代わってしたり、必要に応じて取消します。 |
制限 | 補助人に付与される同意権・取消権の対象となる特定の法律行為は民法第13条第1項で定められているものに限ります。 | 民法第13条第1項の行為については、当然、保佐人に同意権・取消権が与えられます。 | 無制限 |
(注1)契約行為(金銭の貸し借り、自動車の購入等)を一人でできるが不安がある等
(注2)日常生活に必要な買い物を一人でできるが、(注1)行為はできない等
(注3)日常生活に必要な買い物を一人でできない等
※民法第13条第1項の行為
1.貸金の元本の返済を受けたり、預貯金の払戻しを受けたりすること。
2.金銭を借り入れたり、保証人になること。
3.不動産をはじめとする重要な財産について、手に入れたり、手放したりすること。
4.民事訴訟で原告となる訴訟行為をすること。
5.贈与すること、和解・仲裁合意をすること。
6.相続の承認・放棄をしたり、遺産分割をすること。
7.贈与・遺贈を拒絶したり、不利な条件がついた贈与や遺贈を受けること。
8.新築・改築・増築や大修繕をすること。
9.一定の期間を超える賃貸借契約をすること。